第332章 憎しみすら与えたくない

相良剛は一瞬固まり、彼女の意図を理解した。

もう怒りは消え、心には痛ましさだけが残った。

そして自責の念も感じた。彼女を助けられなかったことを悔やんで……

「桜、君は間違っていない。役立たずの僕が君を助けられなかったんだ」と彼は罪悪感を込めて言った。

海野桜は慌てて首を振った。「相良兄、これはあなたには関係ないわ。自分を責めないで。むしろ感謝しているの。こんなにも一生懸命助けてくれて、本当にありがとう。私があなたの好意を無駄にしてしまったの」

相良剛は唇を引き締めて言った。「じゃあ、本当に東山裕と再婚して、一生彼と一緒にいくつもりなの?」

「うん」海野桜は頷いた。もう決めたことだから、変えるつもりはなかった。

相良剛の心は少し痛んだ。「後悔しない?」

海野桜は微笑んだ。「しないわ。相良兄、本当に大丈夫なの。私のことを心配しないで。もう全てを悟ったから、平気よ」