「気分が乗らないわ!」海野桜は元気なく言った。
東山裕はすぐに緊張した。彼は手を伸ばして彼女の額に触れた。「具合が悪いの?胸が苦しいの?」
「そうよ……」
東山裕は眉をひそめ、顔も暗くなった。「なぜ早く言わなかったんだ?!体調が悪いなら医者に診てもらうべきだ。海野桜、お前は本当に一瞬たりとも安心させてくれないな!」
責める口調ではあったが、それでも彼は緊張して彼女を抱き上げ病院へ連れて行こうとした。
しかし、海野桜は手を伸ばして止めた。「病院に行く必要はないわ。傷が痛むんじゃなくて、心が痛むの」
東山裕は呆然として、疑問に思った。「心が痛む?」
海野桜は悲しそうに彼を見つめ、率直に尋ねた。「会社がこんな状態なのに、どうして私に言わなかったの?」
東山裕はすぐに全てを理解した。
彼女はきっと外出して、何かを知ったのだろう。
最近、海野桜が入院していたため、彼は彼女に外部の情報に触れさせないようにしていた。彼女に心配させたくなかったからだ。
しかし、これらの事は長く隠せないことも分かっていた。
東山裕は沈んだ声で尋ねた。「それだけで気分が悪いのか?」
「私の気分がいいはずがあるの?」
「海野桜、こういうことは心配しなくていいと言っただろう。少しお金を失っても大したことじゃない」
「これが少しのお金を失うことなの?」海野桜は反問した。「みんな言ってるわ、あなたの会社が終わるって。あんなに大きな東山グループが終わるって!」
東山裕は笑い出した。「まだ終わってないよ。何を心配してるんだ?」
「終わってから心配しても、意味ある?」海野桜はもう彼と無駄話をする気はなかった。彼女は離婚協議書を取り出して彼に渡した。「私はもう署名したわ。あなたも署名して!今回はあなたが何を言おうと、署名してもらうわ。でなければ、でなければ私は絶食するわ!」
信憑性を高めるために、海野桜はさらに強く強調した。「言ったことは実行するわ!もしあなたが会社をこのまま放置するなら、私はそれと運命を共にするわ!」
東山裕:「……」
くそ、運命を共にするだと!
「海野桜、本気なのか?」東山裕は冷静に尋ねた。
海野桜はうなずいた。「そう、本気よ!」