彼女はエプロンを脱ぎ、携帯電話を取り出して見ると、すぐに驚愕した!
なぜなら、この番号は彼女だけが知っている専用の番号だったからだ!
東山裕が彼女のために特別に設定した番号……
だからこの電話は、きっと東山裕からのものに違いない!
海野桜は突然興奮して手が震え始めた。彼女は一刻も無駄にできず、急いで電話に出た。「もしもし、東山裕、あなた?」
「ああ、俺だ!」向こう側から、東山裕の低く、同じく思いに満ちた声が響いた。
海野桜の目から涙が、一気に溢れ出した。
「東山裕、どこにいるの?大丈夫?怪我してない?」海野桜は緊張して尋ねた。
東山裕は微笑んだ。「大丈夫だ。海野桜、電話をかける時間は少ししかない。聞いてくれ、俺は大丈夫だから、俺は……」
「バン——」
海野桜が東山裕の話を聞いている最中、突然向こう側から銃声が聞こえた。
そして東山裕の声も、突然途切れてしまった!
海野桜の頭が一瞬ぼうっとなり、無意識に、おそるおそる口を開いた。「もしもし……」
しかし電話は切れていて、何の音も聞こえなくなっていた。
「もしもし……」海野桜はあきらめずにもう一度呼びかけた。「東山裕、聞こえる?東山裕……」
向こう側からは、やはり何の音もなかった。
海野桜は震える手で携帯を下ろし、電話が切れていることに気づいた。
彼女はすぐにもう一度かけ直したが、もう繋がらなかった。
海野桜は床に膝をついて座り込み、あきらめずに何度も何度もダイヤルを押した。電話からは機械的な女性の声だけが返ってきた。
【申し訳ありませんが、お掛けになった電話は繋がりません……】
電源が切れているわけでもなく、サービスエリア外でもなく、ただ繋がらないのだ。
なぜ繋がらないのだろう?
なぜ銃声が聞こえたのだろう?
海野桜は何も考えられなかった。ただ、彼女の心が死にそうなほど痛んでいることだけは分かっていた!
鴻野美鈴がキッチンに入ると、海野桜が涙でいっぱいの顔で床に膝をついて、無意識に繰り返し電話をかけている姿が目に入った。
彼女のそんな異様な様子を見て、鴻野美鈴は衝撃を受けた。
「桜ちゃん、どうしたの?!」彼女は駆け寄って緊張した様子で尋ねた。
しかし海野桜は彼女の声が聞こえていないようで、まだ電話をかけ続けていた……