第465章 彼はまだ林馨の夢を見ていた

彼女の後頭部をしっかりと掴み、彼は受け身から主導権を握り、激しく彼女にキスした。

海野桜も興奮剤でも飲んだかのように情熱的に応えた。

東山裕は突然彼女から離れ、立ち上がって服を脱ぎ始めた。目には熱い欲望が満ちていた。

「海野桜、これはお前が自ら招いたことだ!本当は夜まで待つつもりだったが、もう我慢できない!」

彼の体内では、もはや制御できないほどの欲望が波のように押し寄せていた……

そして海野桜も、彼を求めていた!

こんなに長く離れていたのだから、今は密接に体を寄せ合い、お互いを強く感じ合うことでしか、彼らの心は充実感、満足感、幸福感を得られなかった。

海野桜と東山裕は二人とも自制心を失っていた。

情熱が部屋の中で狂ったように繰り広げられた……

どれくらい時間が経ったのか分からないが、ようやく全てが静まり、二人とも疲れて深い眠りについた。

しかし海野桜はしばらく眠ったあとで目を覚ました。

彼女は横向きになって眠っている東山裕をじっと見つめ、貪欲に彼の顔を見つめ、まばたきひとつしなかった。

過去数ヶ月間、東山裕に会えなかった彼女は、ただ彼の姿を想像することで恋しさを紛らわせるしかなかった。

今、ようやく本物の彼に再会できて、海野桜の心はこの上なく喜びに満ちていた。

まるで空気さえも甘く感じられるほどだった……

海野桜が静かに笑いだした時、東山裕が寝言を言うのが聞こえた。

「海野桜……」彼は無意識に彼女の名前を呼んでいた。

海野桜は笑顔を広げ、彼が夢の中で何を見ているのか興味津々だった。

「林馨……」そして、東山裕は別の名前も呼んだ。

海野桜はハッとして固まり、先ほどまでの喜びが一瞬にして消え去り、気持ちは暗く沈んだ。

東山裕はどういうつもりなの?

彼はまだ林馨のことを夢に見ているの?夢の中で彼らは何をしているの?!

海野桜は体を起こし、怒り出そうとした時、突然また東山裕の寝言が聞こえた。

「愛してる、海野桜……」

海野桜は彼を起こそうと伸ばした手が宙に止まり、視線も柔らかくなった。

まったく、彼女は何を疑っているのだろう。

東山裕が彼女をどれほど愛しているか、彼女は誰よりもよく知っている。だから彼の心を疑う必要など全くなかった。

寝言は何も意味しない。