第515章 あなたが死んだら私も生きたくない

あの夜、彼女と東山輝昭の間で起きたことを、彼女はまだ彼に話していなかった……

突然顎を掴まれ、東山裕が彼女の顔を上げさせた。その黒く沈んだ鋭い眼差しは無視できないほど鋭かった。

「教えてくれ、彼は君に何をしたんだ？」

「何もされてないわ！」海野桜は反射的に弁解した。「東山裕、まさかあの老婆の言葉を信じたわけじゃないでしょうね？」

その可能性を考えると、海野桜の心は冷え込んだ。

東山裕は眉をひそめた。「彼女の言葉なんか信じるわけないだろう。だが、君は東山輝昭を殺しかけたと言った。だから知りたいんだ、一体何があったのか」

海野桜も、ごまかし通せないことはわかっていたので、正直に話すことにした。

「彼は私に何かしようとしたの。最初は50億円の資産権で誘惑してきたけど、私が応じなかったら、今度はアフリカに売り飛ばすって脅してきたわ。それでも応じなかったから、彼は直接手を出そうとした。幸い、食事の時にナイフを隠していたから、彼を刺して傷つけたの」

海野桜はさらりと話したが、東山裕はそれを聞いて、心が締め付けられた。

当時の海野桜の状況は想像に難くなかった！

東山裕は陰鬱な声で尋ねた。「それで？彼は君に何もしなかったのか？」

「何もなかったわ。私も不思議だったの。私は彼を殺しかけたのに、彼は私に何もせず、翌日には福岡市に連れ戻したの」

「君はその時、自殺しようとも考えていたんじゃないのか？」東山裕は突然直接的に尋ねた。

海野桜は一瞬戸惑ったが、すぐに我に返って首を振った。「ないわ！」

「海野桜、これからどんなことがあっても、君はしっかり生きていかなければならない！簡単に自殺なんてしちゃダメだ。いや、どんなことがあっても死んではいけない。君にはただ元気に生きていてほしいんだ、わかるか？」

海野桜は彼の様子を見て、彼が自分の言葉を信じていないことがわかった。

でも……

「東山裕、あなたが言うのは簡単よ。もし本当に私がアフリカに売られていたら、死んだ方がましだったわ」

「死んではダメだ！」東山裕は突然激しく反論した。

海野桜はびっくりして、彼が目を見開いて強く言うのを見た。「何が起きても、死んではいけない！たとえ俺が死んでも、君はしっかり生きていかなければならないんだ！」