第517章 ライチを食べさせるという罰

声が聞こえなかったので、来栖雅は不思議そうに何度か呼びかけた。「東山、聞いてる?」

海野桜は普通の口調で言った。「ごめんなさい、東山裕は寝てしまったわ。後で彼から電話させるわね。」

電話の向こうの来栖雅は、海野桜が電話に出るとは思っていなかったようで、少し沈黙した後に言った。「浜田さんですよね。東山裕に用があったんですが、大したことではありません。こちらの業務の件です。彼が起きたら、私に電話をくれるよう伝えてください。」

「わかりました。」そう言って、海野桜は電話を切った。そして気分が沈み、どうしても明るい気持ちになれなくなった。

彼女は東山裕が横浜市に支社を開く予定だということを知っていた。でも彼は来栖家とは協力しないと言っていたはずでは?

それなのに来栖雅からの電話は何のつもり?

まさか二人が仕事を口実に、実は密会でもしているのでは?

海野桜は頭を激しく振った。何を考えているんだろう。

東山裕は彼女を裏切ることはない。もし本当に他の女性を好きになったのなら、彼女を蹴り出すこともできるし、隠す必要なんて全くない。

でも、彼女はどうしても二人の間に何かあると感じていた。

女性の直感はいつも正確だ。とにかく海野桜は彼らの関係が単純ではないと確信していた!

東山裕は午後いっぱい寝て、やっと目を覚ました。

寝室には誰もいなかった。彼は体を起こし、浴室で身支度を整えてから階下に降りた。

そして、リビングに入るとすぐに、変な匂いがした。

ちょうどそのとき、海野桜が皮をむいたドリアンの皿を持ってキッチンから出てきた。

東山裕を見ると、彼女は明るく笑って、心配そうに尋ねた。「あなた、起きたの?体の調子はどう?少しよくなった?」

東山裕の目が一瞬揺れた。

なぜかわからないが、彼の直感が告げていた。海野桜がおかしい。なぜおかしいのかはわからないが、彼女の様子がどこか変だと感じた。

東山裕は平静を装い、うなずいた。「だいぶ良くなったよ。大丈夫だ。」

「良くなったならいいわ。早くドリアンを食べて、今剥いたばかりで、とても新鮮よ!」海野桜はドリアンをテーブルに置き、彼を招き入れながら、目を細めて笑った。

東山裕は近づいて座り、ドリアンを嫌そうに見つめた。「君はこれが好きなの?」