「ばれなくて良かった。奥さん、君の演技力は実はなかなかのものだね」
海野桜は自分が地面に倒れて死んだふりをしていた姿を思い出し、彼女も笑い出した。
彼女は不機嫌そうに言った。「私は真面目な話をしているのよ、冗談じゃないわ!」
東山裕は彼女の額にキスをして、「僕も真面目だよ。でも君の演技力と反応の速さには、本当に驚いたよ」
「私にどんな演技力があるっていうの、東山輝昭が合図をくれたから演技したのよ。それより、あなたはどうして死んだふりをしようと思ったの?」海野桜は顔を上げて不思議そうに尋ねた。
東山裕は口元を緩めた。「弾が私に当たった瞬間、何か変だと気づいたんだ。それに東山輝昭も目配せで合図してくれたから、賭けに出ることにしたんだ」
思いがけないことに、東山輝昭は本当に彼らを殺すつもりはなかったのだ。
そのことを話していると、海野桜はまた恐ろしくなった。
「幸い東山輝昭が藤原恭子の陰謀に先に気づいてくれたわ。そうでなかったら、今日私たちは死んでいたかもしれないわね」
東山裕はすぐに海野桜をじっと見つめ、目を深く沈ませた。
海野桜は不思議に思った。「どうしたの?何を考えているの?」
「君は我が家の福の星だと思っているんだ!」
海野桜は驚いた。「どんな福の星よ?」
東山裕は笑い出した。「私は前世のことを知っていても、悲劇を避けられると思っていた。でも藤原恭子が私たちを殺そうとするなんて、防ぎようがなかった。東山輝昭は法を無視して好き勝手する奴だから、本気で私たちを殺そうと思えば、大通りを歩いていても殺されていただろう。だから今回は君がいなければ、私たちは本当に死んでいた。しかも一家が互いに殺し合うという悲劇になっていたはずだ」
海野桜はぎょっとした。「あなたが言っているのは、私が彼に藤原恭子が彼の母親ではないと言ったことのこと?」
「うん。それだけじゃなく、君は彼に大きな影響を与えているような気がする。他の人が言ったとしても、彼は聞く耳を持たなかっただろう」