ダックスの決断

何年も同じテーブルを囲まなかった家族との楽しい夕食のはずだったのに、トリスタンの気分は地に落ち、両親と一緒に座っているのが苦痛でしかなかった。

トリスタンは全く食事を楽しめなかった。まるで味のない食べ物を口に運んでいるかのように食事を終えた。

両親が会話を交わす中、彼らの話す内容は右から左へと素通りしていった。

先ほどのジェシカとの会話が、二人の間に不和を生んでいた。トリスタンはジェシカに一言も話さず、ジェシカも同様だった。

夕食後、トリスタンはすぐに別れを告げた。しかし家を出る前に、息子のダックスのことを両親に話さないよう、祖父に念を押していた。

心の奥で、母親がベラをそれほど嫌う理由が何かあるのではないかと疑い始めていた。息子を家族に紹介する前に、何が起きたのかを突き止め、それに基づいて行動する必要があった。

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一方、ベラの家では。

ベラはダックスを寝室に呼んだ。トリスタンとの面会の計画について話す必要があったのだ。

ソファに並んで座ったものの、すぐには本題に入らず、まずは曾祖父と過ごした今日の出来事について話してもらおうとした。

「ママ、今日シンクレアおじいさんが海辺の家に連れて行ってくれたんだ。白い砂浜はなかったけど、海に長い桟橋があってね...」

二人の曾祖父母と過ごした一日のことを、すべて母親に話して聞かせた。

レイクビュー村にいた頃のように、釣りをしたり、食事をしたり、チェスをして遊んだりした。

ベラは息子の声の弾みと目の輝きを見て、心が温かくなった。その幸せそうな様子に、思わず微笑んでしまう。

「二人と過ごして楽しかった?」

「うん、ママ、すっごく楽しかったよ。シンクレア曾祖父が、白い砂浜のある島に連れて行ってくれるって言ってたんだ。」

「それを聞いて嬉しいわ、坊や」彼女は息子のぽっちゃりした赤い頬をさすりながら言った。「でも次に外出する時は日焼け止めを忘れないでね?あなたの肌は敏感だから。見て...頬がこんなに赤くなってるわ。」

ダックスは腕を組んでため息をついた。「ノーラおばさんが持ってくるの忘れちゃったんだ。」

「次は私から念を押しておくわね。」

「あ、ママ、何か話したいことがあったんでしょ?」ダックスは美しい青い瞳をまばたきさせながら、母親の考えていることが気になって尋ねた。