「今夜、私と一緒に寝させてください、シンクレアさん」
トリスタンの言葉が、まだベラの心に響いていた。どんなに忘れようとしても、できなかった。
デッキの端を見ながら、こっそりと息を吐いた。
ベラの目はトリスタンの背中に釘付けになった。彼はダックスの隣の椅子に座り、魚が餌を食べるのを待っていた。二人が話しているのが見え、トリスタンは愛情を込めてダックスの肩を叩き、髪を撫でようとさえしていた。
二人の親密な交流を見ていると、ベラの心は温かく膨らんだ。息子とトリスタンの親密さを目の当たりにして、喜びを隠せなかった。
トリスタンと共にこの旅を始めることを許した自分に、何度も感謝した。
「お嬢様、またトリスタン様に恋をしてしまったようですね」とノーラがささやき、ベラは即座に横を向いた。