矢崎美緒はお粥の茶碗を見た瞬間、大変なことになったと悟り、急いで卵麺を置いて、焦りの表情で眠っている矢崎若菜を起こしに行った。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、こんなに早く食べちゃダメって言われてたでしょう?どうしてママの言うことを聞かないの?いつも自分の健康を使って反抗するようなことをして...!」
ぐっすり眠っていたのに突然揺り起こされて呼ばれた矢崎若菜は、ぼんやりとしたまま起き上がった。何が起きているのか理解する前に、矢崎美緒の矢継ぎ早の言葉に呆然としてしまった。
「お兄ちゃん、具合悪くない?」矢崎美緒は焦った声で尋ねた。
「ないよ、美緒。どうしたの?」矢崎若菜は首を傾げて疑問そうに彼女を見た。
矢崎若菜が余計なことを言わないのを見て、矢崎美緒はほっと胸をなでおろした。「大丈夫でよかった、よかった。お兄ちゃん、次は今日みたいにわがまましちゃダメだよ。もしまた食あたりになったらどうするの?これからは私が先に食べて大丈夫なのを確認してからにしよう!」
妹の真剣な表情と口調に、矢崎若菜はお粥一杯でどうして食中毒になるのかわからなかったが、妹に心配されて嬉しく思い、協力的に頷いた。「わかったよ、美緒。これからは気をつけて変なものを食べないようにするよ。」
「???」
岡田淳は、この兄妹の会話がおかしいと感じた。明らかに二人は別のことを話しているように見えるのに、なぜか同じことを話しているようにも感じられた。
矢野常が一言加えた。「若菜、お粥を飲んだ後、吐き気とか体調不良はなかった?」
矢崎若菜は親友が一昨日の食中毒のことを心配しているのだと思い、笑って首を振った。「矢野、大丈夫だよ。今回は調子いいし、前みたいなことは起きてないよ。」
矢崎若菜のこの答えの中の「前」という一言が非常に興味深かった。偶然にも矢崎美緒の嘘をクリアする助けとなった。
みんなは彼女が言った矢崎若菜の食欲不振は確率の問題であり、嘘をついたわけではないと考えるようになった。
矢崎若菜の答えを聞いて、矢崎美緒と矢野常は同時にほっと胸をなでおろした。
矢崎美緒は自分の嘘がばれなかったことに安堵し、矢野常は美緒が非難を避けるために嘘をつかなかったことに安堵した。