116 反撃

二時間以上の運転の末、矢崎泰は矢崎粟を市内唯一の四つ星ホテルまで送り届けた。

車が停まるとすぐに、矢崎泰は矢崎粟に尋ねた。「粟、矢野常との件について、いつ返事をするつもり?」

矢崎粟はシートベルトを外しながら答えた。「矢野常がツイートした後に、すぐに返事をするわ」

彼女の矢野常に対する理解では、彼が矢崎弘の恋愛暴露の方法に同意した以上、帰ったらすぐにこの件について投稿するはずだった。

案の定、矢崎粟が部屋に着いて荷物を置き、スマートフォンを開くと、SNSで矢野常が投稿したばかりのツイートを目にした。

ツイートの内容は:【私と矢崎粟は確かに付き合っています。】

矢野常の返答はすぐにネット上で大きな波紋を呼び、彼のファンたちは皆騒ぎ出した。

ファンたちは以前まで自分の心を騙そうとして、これは無責任なメディアが矢野常と矢崎粟の話題性で稼ごうとしているだけだと思い込もうとしていた。

しかし今、矢野常が自らツイートでこの事実を認めたことで、ファンたちの幻想は完全に打ち砕かれ、矢野常を「未来の夫」として思い描いていたファンの中には、思わず泣き出す者もいた。

ファンたちは矢野常を責めることができず、代わりに矢崎粟のSNSアカウントに殺到して彼女を罵倒した。

すぐに、#スター矢野常が恋愛を認める#というトピックがトレンド入りした。

矢野常の返答がトレンド入りするのを見た後、矢崎粟はすぐにツイートを編集して投稿し、さらにそのツイートのために話題性を購入した。

矢崎粟のツイート内容はシンプルだった:【私はすでに矢野スターと別れ、直接矢野スターと絶交しました。皆様の理性的な対応を願います。】

ツイートの下には、通話記録の音声も添付されていた。

音声の中で、確かに別れを切り出したのは矢崎粟だったが、それは彼女の過ちではなかった。彼女が録音したのは、反撃するためであり、ついでにネットユーザーたちに、あの有名な矢野スターが本当はどんな人物なのかを見せるためだった!

なぜ彼女が矢崎美緒の尻拭いをしなければならないのか?なぜ矢崎美緒の代わりに矢野常のファンからの罵倒を受けなければならないのか?