「こんなツイートを投稿して何のつもりだ?私が今、あなたと美緒のために矢崎粟と対決していることを知らないのか?」
矢野常は矢崎弘の言葉を一蹴し、十数年の付き合いで初めて彼の本心を暴いた。「矢崎さん、あなたの行動は本当に私と美緒のためだけなんですか?」
矢崎弘は一瞬固まった。「矢野、その言葉はどういう意味だ?」
「特に意味はありません。ただ、私は矢崎粟を助けたいだけです」矢野常の声には少し笑みが含まれていた。
それを聞いた矢崎弘は怒るどころか、冷笑して言った。「別れてから矢崎粟のことを気遣うようになったのか。付き合っていた時は何をしていたんだ?」
矢崎弘は更に皮肉を言い続けた。「偽善者ぶるのはやめろ。今さら深情な人物像を作ろうとしても、ネットユーザーが納得するとは限らないぞ!美緒があれほど優しくしてくれたのに、今更矢崎粟を助けようとするなんて。以前、バラエティ番組で矢崎粟があなたたちを攻撃していたことを忘れたのか?」
矢崎弘の言葉に矢野常は居心地の悪さを感じたが、強がって言った。「今からでも取り戻せる。もう間違いは繰り返したくない。矢崎さん、失礼な言い方ですが、あなたもそろそろまともな仕事をすべきです。妹に対抗することばかり考えるのはやめましょう」
「私が彼女に対抗している?」矢崎弘は呆れて笑った。「確かに彼女を干すと言ったが、本当に行動に移したことがあるか?むしろ彼女の方が、私を計算して罠にはめようとしているんだ!」
「あなたに悪意がなければ、罠に落ちることもなかったはずです」矢野常は彼の言葉に動揺することなく、皮肉な笑みを浮かべた。「もう二度とあなたを助けることはありません。ご自分で気をつけてください!」
「……」矢崎弘は電話の切れた音を聞きながら、なぜ今では矢野常という友人までも自分を責めるようになったのかと考えずにはいられなかった。
事務所にいた矢崎粟も矢野常のツイートを見たが、彼女の心には何の感動もなかった。
彼女は支援してくれた人々へのお礼のツイートで、わざと矢野常をメンションしなかった。
優秀な元カレは死んだように存在感を消すべきで、いつも存在感をアピールするのは本当に嫌になる。
矢野常は矢崎粟からのメンションを待っていたが、いくら待っても彼女からのメンションは来なかった。