199 執念の怨霊

矢崎弘は言った。「私は渡したくなかったんです。断ろうとしたんですが、どういうわけか、まるで体が操られているかのように、ただ一つの考えしかなくて、それは彼女に渡すことだけでした。もう少しで同意するところでしたが、幸い妹が買ってくれた符紙があったんです。」

矢崎泰は驚いて尋ねた。「符紙?」

「そう、胸が熱くなるのを感じて、完全に正気に戻ったんです。だから彼女の策略に引っかからずに済んだんです。」ここまで話して、矢崎弘は感謝の表情を浮かべた。

矢崎粟がいなければ、彼は大変なことになっていただろう。

毎日不運に見舞われるなんて御免だ!

「早く粟にお礼を言わないとね。私も粟から符紙を一枚買いたくなってきたよ。」矢崎泰は冗談めかして言った。

正直なところ、彼も心が動いていた。

妹の符紙が凄いという噂は聞いていたが、まさかこれほどとは。

「あなたが買うかどうかは別として、私はもう一枚買うつもりです。そうしないと安心できません。」矢崎弘は本当に怖くなったようで、戦慄きながら言った。

あの符紙は本当に効果があった。五百万円でも高くない。

矢崎泰は大笑いした。「矢崎美緒がそこまで容赦なくやってくるとは思わなかったな。以前はあれほど面倒を見てやったのに、今は容赦なく手を下してくる。」

この話題になると、矢崎弘は本当に心が痛んだ。

以前は矢崎美緒が欲しがるものなら、兄弟みんなで力を合わせて与えていた。

彼女が病気になれば、交代で看病していた。

それなのに、今では運気を求めて追いかけ回され、過去の情誼など一切顧みられない。

矢崎弘は顔を青ざめさせて言った。「犬を何年も飼えば情が湧くものだが、彼女は恩を仇で返す白眼の狼だ。これまで守ってきた年月が無駄だった。本当に心が冷える。」

彼の運気の半分を直接要求するなんて、全く彼のことを考えていない。

「彼女はお前たちの負い目だけを覚えていて、恩は全く覚えていない。みんなが彼女を甘やかすべきだと思っているんだ。」矢崎泰は冷笑して、無表情で言った。

彼は早くからそれに気付いていて、弟たちに忠告もしたが、誰も聞く耳を持たなかった。みんな矢崎美緒が世界一の妹だと思っていた。

今になって彼女の本性を知り、きっと大きなショックを受けているだろう。