242 正体を現す

しかし、矢崎政氏は前に出るつもりはなく、矢野常の後ろに隠れ続けていた。

矢崎若菜が矢崎美緒を守るのは、彼の選択だった。

矢崎若菜がいつ真実を見抜けるかは、彼自身の問題であり、矢崎政氏は無理強いするつもりはなかった。

矢崎政氏の目には、矢崎若菜は今日本当に愚かに見えた。

番組の始めから、彼は矢崎美緒に利用されていた。

矢崎政氏は考え直してみると、以前の自分もそれほど愚かだったような気がして、急に受け入れがたくなった。

この時、生放送を見ていた矢崎泰と矢崎弘も面白そうな表情を浮かべていた。

この三男はあまりにも愚かで、まるで戦う雄鶏のように、矢崎美緒に利用されている。

矢崎粟は振り向いて、冷たく矢崎若菜を見て、「何が言いたいの?」と言った。

「あなたたちは礼儀知らずで、挨拶にも返事もしない、まったく教養がないと言っているんです」と矢崎若菜は怒りを込めて言った。

矢崎粟は嘲笑って、「ふん、私はもう矢崎美緒と決裂しているのよ。表面的な礼儀を保つ必要があると思う?」

挨拶をするにしても、相手が応じる気があるかどうかを見極めないと。

「たとえ決裂していても、私たちは同じバラエティ番組にいるんです。礼儀正しく接する必要があるんじゃないですか?決裂したからって、冷たくする必要がありますか?」と矢崎若菜は怒りながら反問した。

矢崎粟は言った。「以前のバラエティ番組で何が起きたか忘れたの?それとも、あんなことがあったのに、偽善的に仲直りしろって言うの?」

申し訳ないけど、彼女はそんな生き方はしたくなかった。

小島一馬も冷たい表情で言った。「矢崎若菜さん、妹さんを守りたいのはわかりますが、事実をはっきりさせてから話すべきです。私たちの粟は善悪をはっきりさせる人です。誰かさんみたいに表と裏で態度を変える人間じゃありません」

小島一馬から見れば、矢崎若菜は頭の働きに問題があった。

目の利く人なら誰でもわかるはずだ。この矢崎美緒はカメラがあるから、わざと前に出て挨拶をし、視聴者に矢崎粟の性格が悪いと思わせようとしているのだ。

こんな策略家の女性なのに、矢崎若菜は見抜けず、それどころか矢崎美緒を守ろうとしている。

矢崎若菜の知能は、人を焦らせるほどだった。

事態がここまで来ると、もう言うことは何もない。