矢崎政氏は素早く反応し、駆け寄って一蹴りを放った。
竜田敢は再び蹴り飛ばされ、石畳の上に倒れ込み、全身が痛みに包まれた。
彼は苦痛の呻き声を上げながら、まだ逃げようとしたが、矢野常が駆け寄って押さえつけ、逃げられないようにした。
先ほど竜田敢に蹴り飛ばされたのが恥ずかしかったので、矢野常は面目を取り戻そうと、より強く竜田敢を押さえつけた。
竜田敢は声を張り上げて叫んだ。「これは違法だ!不当な拘束だぞ!訴えてやる、離せ!」
彼は叫び続けたが、その場にいた全員が軽蔑の眼差しを向け、誰も相手にしようとはしなかった。
傍らの澤田武は呆然とそれを見つめていた。
矢崎粟の言っていたことは全て本当だったのだ。竜田敢は何人もの人を殺していて、自分よりもさらに残虐だった。
澤田武も後悔していた。先ほどの矢崎粟の話を継父と母親が聞いていたら、きっと自分のことも疑われただろう。