381 取引

四人は病室の中を覗き込んだ。

介護士が叫んだ。「あなたたち、何をしているんですか？用もないのに病室の前に集まらないでください！」

彼には雇用主を守る義務があった。

利木健史は笑顔を作り、「矢崎若菜を探しています。私たちは彼の友人で、見舞いに来ました」と言った。

介護士は疑うことなく、ドアを開けて四人を中へ通した。

その後、彼も病室に入り、この四人が雇用主に危害を加えないよう見張った。

矢崎若菜は四人が入ってくるのを見て、不思議そうに尋ねた。「何しに来たんだ？」

試合以来、彼らとは連絡を取っていなかったし、わざわざ訪ねてくる必要もないはずだった。

利木健史は「実は、矢崎若様と取引の話があるんです。これは秘密にしておく必要があります」と言った。

彼は介護士の方を見て、退室するよう暗に促した。

矢崎若菜は興味を持ち、介護士に外に出るよう指示した。

人が出て行くと、利木健史は部下に病室のドアを閉めさせ、二人を入口の見張りに立たせ、盗み聞きを防いだ。

それから矢崎若菜の方を向き、笑いながら言った。「矢崎若様、この数日間もずっと不運が続いて、辛い思いをしているでしょう？」

病院に来る前、利木健史はあの日の生配信を確認しており、矢崎若菜が不運に見舞われている理由も知っていた。

同時に、この数日間、矢崎若菜が生きた心地がしていないことも分かっていた。

矢崎若菜は確かに崩壊寸前だった。

彼は毎日、病の苦しみに耐えるだけでなく、不運の到来を恐れおののきながら過ごしていた。

日が経つにつれ、矢崎美緒への憎しみもますます深まっていった。

もし藤田川で占いをしてもらった日に戻れるなら、矢崎若菜は迷わず呪術を解除することに同意していただろう。

矢崎若菜は歯を食いしばり、怒りに満ちた表情で四人を見つめ、「一体何がしたいんだ？俺を馬鹿にしに来たのか？」と言った。

彼はすでに十分苦しんでいた。

利木健史は口元に笑みを浮かべながら、ため息をつき、「矢崎若様、焦らないでください。今日はその件について話し合いに来たんです。私のところに矢崎美緒の髪の毛と血液があります。あなたに売ることができます」と言った。

矢崎若菜は冷たい表情で「そんなものを持っていて何の意味がある？」と言った。