374 矢崎粟に手を出す

番組終了まであと二日。

矢崎粟のチームは十分な資金を稼いでおり、四人はもう働く予定はなかった。

朝食後、彼らは観光ツアーに参加した。

四人はガイドの案内に従って中華街の観光スポットを巡り、多くの人気レストランも訪れた。

二日後、番組は正式に撮影終了を宣言した。

ディレクターはスタッフに出演者たちの東京行きの航空券を予約するよう指示した。

矢崎粟は制作陣の好意を断り、中華街にもう数日滞在する予定だと告げた。

小島一馬は矢崎粟が一人で中華街にいるのは危険で心配だと思い、自ら同行を申し出た。

しかし矢崎粟は断った。

彼女は、澤蘭子が彼女を襲わせた以上、簡単には諦めないだろうということをよく分かっていた。

小島一馬が彼女の側にいれば、危険に巻き込まれる可能性があった。

矢崎粟が断ったので、小島一馬もそれ以上は主張せず、ただ気をつけるように、何かあったら連絡するようにと伝えた。

矢崎政氏も中華街を離れなかった。

三男はまだ療養中で動かすことができず、彼は矢崎若菜の看病のために残った。

矢野常も離れなかった。

彼は今朝母親から連絡を受け、澤蘭子が東京から駆けつけ、すでに中華街に到着したことを知った。

矢野常は母親が恨みを抱いていることを知っており、矢崎粟に危害を加える可能性が高いと考え、母親を止めるために中華街に残ることにした。

その夜、矢崎粟は身を包み込むように着込んで、ホテルを出て道家協会に向かった。協会の金庫に師匠が残したものを取りに行くためだった。

矢崎粟が暗がりに差し掛かったところで、突然現れた四人に行く手を阻まれた。

矢崎粟は彼らを知っていた。アーチェリー大会での矢崎美緒のチームメイトだった。

矢崎粟は眉を上げ、笑いながら尋ねた。「何か用?」

利木健史は笑ったが、その笑みは目には届いていなかった。「矢崎さん、怖がらないでください。ちょっとお願いがあるんです。」

矢崎粟は「言ってみて」と返した。

利木健史は「あなたの髪の毛を一本と、血を数滴いただきたいんです」と答えた。

そう言って、彼はバッグからガラス瓶を取り出した。

彼の後ろの三人も、凶悪な表情で矢崎粟を見つめていた。

矢崎粟は口角を上げ「断ったら?」と言った。