二人は個室に入り、店の看板メニューのお酒を注文して、窓際に座って飲み始めた。
窓からは1階のステージがちょうど見えた。
眺めは悪くない。
二人は曲をリクエストし、心地よい音楽に耳を傾けた。
しばらくすると、一行がバーに入ってきて、1階の席に着いた。
ちょうど矢崎粟たち二人の視界に入る場所だった。
この数人は皆顔なじみだった。
矢野朱里は驚いて矢崎粟に尋ねた。「粟、彼らが来ることを知っていたの?」
テーブルの主な四人は、森田廣とその噂のある女性部下、それに矢崎美緒と従兄の小林瑞貴だった。
他にも大勢の金持ちの若者たちが付いてきていた。
矢崎粟は少し笑って、「彼らは彼らの酒を飲めばいい、私たちは私たちの酒を飲めばいい、邪魔にはならないわ」と言った。
そう言って、彼女は笑顔でその一行を見つめた。
中心にいる森田廣の様子はあまり変わっていなかったが、上司としての威厳が身についていた。
噂のある女性部下の吉村久真子は白いドレスを着て、長い髪を肩に垂らし、視線は常に森田廣を追っていた。
彼女は森田廣の隣に座り、二人はまるでカップルのように見えた。
矢崎粟も少し驚いていた。まさか矢崎美緒がこんなに早く道家協会から解放されて、従兄の小林瑞貴と関係を持つとは思わなかった。
この二人はさらに森田廣とも連絡を取り合っており、関係は良好そうだった。
矢野朱里は口を尖らせ、呆れて言った。「この二人は本当に遠慮がないわね。森田廣が彼女を連れ出すなんて、関係は確実なものになったみたいね」
彼女は気にしていないふりをしたが、心は煩わしかった。
矢崎粟は少し笑って、「いい芝居が見られるから、そんなに考え込まないで。彼らのこの外出は無駄にはならないわよ」と言った。
矢野朱里は冷ややかに鼻を鳴らし、スマートフォンを取り出して下の階を撮影し始めた。森田廣と女性部下の親密な様子だけでなく、小林瑞貴と矢崎美緒のカップルも撮るつもりだった。
矢野朱里たちがいる場所は暗く、下の階からは気づかれにくかったため、下の一行は二人に気づいていなかった。
森田廣と小林瑞貴は雑談をしながら、偽りの笑みを浮かべ、二人の隣にいる吉村久真子と矢崎美緒は時々食べ物を差し出していた。
この四人は本当にまるで二組のカップルのようだった。