「ふぅ!」
一声の後、矢崎粟は監視カメラを見た。
オフィスの中。
森田廣は玉の瓢箪を渡し、「大師様のご助力に感謝いたします」と言った。
彼は森田家のコネを総動員して、自分のために新しい法器を探すつもりだったので、特に未練はなかった。
矢崎美緒は玉佩を握りしめ、名残惜しそうな表情で「佐藤大師様、もう少し身につけさせていただけませんか?体調が良くなってからお返しします」と言った。
彼女は本当に返したくなかった。
しかし、この行動で小林瑞貴と矢崎正宗の同情を引きたかった。
佐藤大師の目に光が宿り、「申し訳ありませんが、法器の貸し出しは規則で禁止されています。矢崎さんがご入用でしたら、別の法器をお探しになることをお勧めします」と言った。
矢崎正宗の表情が曇った。
彼は「美緒、法器を返しなさい」と言った。
大師様が断られたのに、まだ求めるなんて、本当に恥ずかしい。
矢崎美緒は父の表情を見て、不本意ながら「分かりました」と言った。
そう言って、彼女は手にしていた玉佩を大師に返した。返した後、彼女は苦しそうに自分を抱きしめ、うめき声を上げた。「体が痛い、耐えられない」
矢崎正宗は無視して、顔をそむけた。
傍らの森田廣と小林瑞貴の体が突然震え、二人は目を合わせ、喜びの色を浮かべた。
小林瑞貴が先に「あなたも痛みが引いた?」と言った。
森田廣は頷いた。これは矢崎粟の仕業だと察したが、その意図は分からなかった。
小林瑞貴は矢崎正宗の方を向き、喜んで「おじさん、僕は良くなりました。全然痛くありません。きっと矢崎粟が呪術を解いたんでしょう」と言った。
矢崎美緒は眉をひそめ、怒りを込めて「いとこ、嘘をつかないで。私はまだすごく痛いのよ」と言った。
彼女の顔全体が痛みで麻痺しそうだった。
小林瑞貴は冷笑して「嘘なんかついていない」と言った。
その後、彼は普通に歩き回り、胸を叩いてみせた。蹴られた後の痛みが少し残っているだけで、他には何も感じなかった。
森田廣も頷いて証言した。「私も痛みはほとんどありません」
吉村久真子は苦痛の表情を浮かべ、「でも私の顔はまだとても痛いわ。呪術は解けていないわ」と言った。