668 自惚れすぎ

矢野朱里は澤蘭子の考えていることを察し、心の中で笑いたくなった。

どうやら、この伯母は自信過剰で自己陶酔的すぎるようだ。伯父が彼女をそれほど愛していると本当に思っているなんて、笑わせる。

矢野朱里は微笑んで言った。「後悔なさらないことを願いますよ!後悔しても無駄ですけど。」

澤蘭子は矢野朱里が口先だけで強がっていると思い込んでいた。「後悔するのはあなたの方よ。矢野家を出て行って、外の世界がそんなに甘いと思っているの?大間違いよ。」

あの二人の老いぼれが死んだら、夫に矢野朱里名義の株式を全部取り戻させるつもりだった。

そうすれば、矢野朱里は貧乏人になる。

矢野常は母親の得意げな様子を見て、思わずため息をついた。「お体を大切にして、善行を積んでください。」

言い終わると、矢野常は立ち上がり、振り返ることなく外へ向かって歩き出した。