堀信雄は密かに歯を食いしばり、口を開いた。「道家協会は北西部に事務所が必要でして、小林家の産業下にある景勝地開発区域が丁度良いのです。もし小林家が譲ってくださるなら、道家協会が事務所を建設させていただき、それは双方にとって良いことではないでしょうか」
事務所を建設するとなれば、当然一定の区域を区画する必要がある。
その時、道家協会は霊石のある場所を全て区画し、道家協会の所有とするのだ。
矢崎粟は冷笑を浮かべた。彼女には分かった!
この老いぼれは悪事を重ねてきたが、小林家の機縁を強引に奪えば天道の罰を受ける可能性があるため、回りくどい方法で策を練るしかないのだ。
だからこそ自ら足を運んできたのか。
矢崎粟は悟ったような目で堀大師を見つめ、顔には明らかな笑みを浮かべた。「堀大師、私が若いからといって、言い訳を作って騙そうとしているのですか?残念ながら、私はそれほど愚かではありません」
彼女は一旦言葉を切り、続けて言った。「北西部の事務所なんて、その場所に霊石があるからでしょう?だから手に入れようと策を練っているのですね」
この言葉が出た途端、その場にいた事情を知らない人々も全て悟った。
小林悠一は拳を握りしめ、目に冷たい光を宿した。
どうやら、この開発区域こそが、小林瑞貴が謀られて毒を盛られた根源のようだ。
堀信雄は心中で驚き、唇を震わせた。
まさか矢崎粟がこれほど賢く、一瞬で彼の本当の目的を見抜き、さらに公衆の面前で暴露するとは。
彼は心を落ち着かせ、口を開いた。「矢崎道友、それは違います。私は決して小林家の開発区域を手に入れようと策を練ってはいません。この場所を求めるのは縁があってのことです。霊石があれば申し分ありませんが、なければそれでも構いません」
堀信雄は引き続き仙人のような態度を保ち、手で髭を撫でながら、淡々とした表情を浮かべた。
矢崎粟は軽く笑い、何も言わなかった。
堀信雄は続けて言った。「この小林若様の体の呪いの毒は既に末期に達しています。これ以上治療を施さなければ、命の危険があるでしょう。私はちょうど人を治療する術を心得ております。これは双方にとって互いに利益のある話です」
彼はさらに小泉西の方を見て言った。「小林夫人、いかがでしょうか?」