719 呪いの毒が解けた

彼は粟を責めなかった。

ただ小林家が粟に申し訳ないと感じ、彼のわがままな妹も粟に申し訳ないと思った。

小泉西も急いで言った。「粟、遠慮しないで。これは小林家からのほんの気持ちだから、この数日は中華街で思う存分楽しんで、後で義理の兄に請求してね。」

彼女は矢崎粟にウインクした。

矢崎粟は返事をしなかった。

小さなベッドの小林瑞貴がようやく目を覚まし、眉をひそめながら必死に目を開けた。「お父さん!お母さん!」

「はい、母さんはここよ。今どう感じる?」小泉西は慌てて尋ねた。

彼女は後遺症が残るのではないかと心配だった。脳はとても繊細だからだ。

小林瑞貴は頷いた。「すごく良い感じです。さっきベッドに横たわった後、粟が来て私の頭に触れたら、その後のことは覚えていません。」

矢崎粟は説明した。「解毒術の時は、睡眠状態になる必要があったので、少し眠ってもらいました。あなたの脳内の呪虫は今すでに除去されたので、これからは普通の生活ができます。」

「よかった。」小林瑞貴は口を大きく開け、笑い声を抑えきれないほどだった。

彼は毎日毎晩、呪虫のことを心配していたが、ようやく呪虫から解放されて、心の中でどれほど晴れ晴れとしているかわからなかった。

小林悠一は思わず厳しい表情で言った。「早く粟にお礼を言いなさい。喜んでばかりいて礼儀を忘れているの?」

小林瑞貴は急いでベッドから降りたが、その動きで首の傷が引っ張られ、思わず声を上げた。「痛っ!首が少し痛い。」

「それは呪虫を取り除いた時の傷跡です。養生すれば良くなります。」矢崎粟は説明した。

小泉西は急いで言った。「男の子なんだから、ちょっとの傷くらい何でもないでしょう。瑞貴、大げさにしないの。」

小林瑞貴は傷に触れ、包帯が巻かれているのを確認して安心した。「わかったよ、母さん!」

彼は矢崎粟の前に立ち、深々と頭を下げた。「ありがとうございます、粟さん。今後私にできることがあれば、何でもさせていただきます!」

矢崎粟は淡々と言った。「大丈夫です。」

小林瑞貴は立ったまましばらく感じ取っていたが、確かに脳が以前より快適になっていて、あの緊張感がなくなっていることに気づいた。「本当に脳が楽になって、普通に戻った感じがします。」