藤村敦史は身につけていた武器袋を開き、青い光を放つ長い鞭を取り出して矢崎粟に向かって振り回した。「矢崎粟、今日がお前の命日だ!」
鞭は毒薬に浸されており、矢崎粟が触れれば確実に死ぬはずだった。
リビングにいた小林美登里と矢崎美緒は一瞬固まった。
数秒後、二人は悲鳴を上げながら、部屋の隅へと逃げ込んだ。
二人とも何もできず、人質にされかねない。生き延びるためには早く隠れるしかなかった。
小林美登里の頭は混乱していた。
なぜ突然戦いが始まったのか理解できなかった。堀大師は矢崎粟を助けに来たのではなかったのか?
なぜ彼も矢崎粟を攻撃するのか?
矢崎粟は法力で長剣を作り出し、藤村敦史の鞭に向かって振り下ろすと、一気に鞭を引き寄せた。
彼女は冷ややかに言った。「武器すら握れないのに、何を戦おうというの?早く逃げた方がいいわ!」
矢崎粟はそう言うと、鞭を地面に投げ捨てた。
藤村敦史は呆然とした。
たった半月ほどで、矢崎粟の実力が以前よりもさらに強くなっているとは思わなかった。
今や彼は矢崎粟の相手ではなかった。
先ほどすでに全力を出していたのだ。
しかし、それを認めるわけにはいかず、怒りを装って言った。「ただ手が滑っただけだ。何を調子に乗っている?お前を殺せば、本当の実力というものが分かるだろう。」
二人は再びリビングで戦い始め、堀信雄は横で焦りながら見ていた。
この藤村敦史は本当に役立たずだ。こんな年で矢崎粟一人も倒せないとは。彼も我慢できずに矢崎粟に向かって何発も暗器を投げた。
その暗器には邪気が仕込まれていた。
矢崎粟が触れれば、もう二度と法力は使えなくなるはずだった。
矢崎粟は器用に暗器を避けながら、堀信雄に向かって叫んだ。「老いぼれ、最初に会った時から、あなたが陰険で狡猾な小人だと分かっていたわ。他人の結婚生活に入り込んで、何人もの子供を作って。矢崎美緒も、矢野徹も、川上夕子も、みんなあなたの子供じゃない!」
「何だって?」矢崎美緒は隅で固まったまま動けなかった。
自分の耳を疑った。
矢崎粟は続けた。「私が昔行方不明になったのも、あなたの仕組んだ罠よ。矢崎美緒の母に私を連れ去らせて、わざと小林美登里を施設に導いて矢崎美緒を養子にさせた。これら全部があなたの陰謀だったのよ。私が何も知らないとでも思った?」