807 毒母

結局、彼らは当事者ではないし、詳しい状況も知らないけど、もしこの女性の言う通りなら、再婚すべきではないわ。

「私はあなたの母親よ。再婚の決定権はあなたにはないわ」本田水鳥は素早く反論し、田中浩を見つめて「浩さん、何か言ってよ。私と再婚してくれない?」

田中浩は冷たい表情を浮かべた。

田中凛はドアの外に向かって叫んだ。「この女を可哀想だと思わないで。何度も浮気して、他の男の子供を産んで、父さんに毒まで盛ったのよ。こんな人が許せるわけない!」

「許せないわ!」通りがかりの住人が小声で言った。

野次馬の住人たちは本田水鳥を指さして囁き合っていた。

本田水鳥はその異様な視線に気付き、胸が高鳴った。「私はそんなことしていない...」と小声で言った。

田中凛は再びドアをバタンと閉めた。

本田水鳥は怒りで足を踏み鳴らした。

もういい、とにかくドアの外で見張り続けて、田中浩の心が軟化するのを待つしかない。

この騒動は、近所の住人が撮影してネットに投稿した。

動画のコメント欄では、多くの人が動画の中の女性が女優の田中凛だと気付いた。

【可哀想な凛ちゃん、芸能界を引退したのに母親に付きまとわれて!】

【母親のくせに、よく父親に付きまとえるわね】

【凛ちゃんは十分苦労してるのに、母親がまた邪魔しに来るなんて、本当に酷い母親!】

【うう、凛ちゃん可哀想】

【田中凛を助ける方法があればいいのに。養父と暮らしているのに、実の母親に付きまとわれる可哀想な子】

田中凛のファンたちも彼女のことを心配していた。

多くの芸能記者が手掛かりを追って田中凛の住所を突き止め、一番手の情報を得ようとカメラを担いでやって来た。

マンションは内も外も記者たちに包囲されていた。

夜。

本田水鳥が再びマンションにやって来た。階段を上がると、多くの記者が待ち構えているのに気付いた。

彼女は喜んで、これで田中凛は私に生意気な態度を取れないだろうと思った。

大胆にドアをノックして、「凛、開けなさい。お母さんが来たわ」

しばらくノックし続けると、田中凛がドアを少し開けた。

彼女は本田水鳥を見て、冷たい目で言った。「何がしたいの?あなたが疲れないなら私が疲れるわ」