矢崎美緒は怒りと悔しさで、部屋に閉じこもったままだった。
以前なら気運が流れ出すたびに、堀首席の屋敷に行って気運を補充してもらえばよかった。
今は堀首席が捕まってしまい、彼女は一人きりになってしまった。
矢崎美緒は長い間部屋にいて、使用人が食事を促しにドアをノックするまで出てこなかった。やっと顔色の悪いまま部屋を出た。
小林美登里はテーブルに座って、矢崎美緒の方を見た。
矢崎美緒を見た瞬間、思わず驚いて「あなたの顔が...」と言いかけた。
残りの言葉は、小林美登里は口にしなかった。
小林美登里は突然、矢崎美緒ががんを患っているのだから、急速に老化するのも当然だと思い至った。もし言葉にすれば、矢崎美緒をより悲しませてしまうかもしれない。
矢崎美緒は口角を引き上げて笑い、食卓に近づいて「ママ、朝ごはん食べましょう」と言った。