彼は入り口にいる矢野朱里を見かけ、思わず声をかけた。「朱里、君も来たのか?」
彼は長い間矢野朱里に会っていなかった。矢野家を訪ねるたびに、使用人は朱里が不在だと言っていた。
矢野朱里は冷笑して、「ふん、自分が愚かすぎるくせに、他人が煞をかけたことを責めないでよ。災いを身近に置いておいて、頭の中どうなってるの?自業自得よ!」
彼女は森田廣に全く同情していなかった。
森田廣はそれを聞いて、苦々しい表情を浮かべた。「その通りだ。確かに私が傲慢だった。継母と堀信雄を排除すれば、吉村久真子は何の脅威にもならないと思っていた。」
彼は教訓を得たようだった。
今後は、最も地位の低い従業員であっても、誰一人軽視してはいけないと。
彼は外のボディーガードを呼び入れ、吉村久真子を連れて行かせた。
森田廣は矢崎粟を見て、「粟、恋人煞を解いてくれてありがとう。後でお礼の品を用意するから、遠慮しないでくれ。」
矢崎粟は冷淡な表情で、「結構です。私は玄学管理所の者ですから、こういった事態に遭遇して救援に参加するのは当然のことです。」
彼女は森田廣とこれ以上関わりたくなかった。
森田廣はため息をつき、躊躇いながら尋ねた。「その恋人煞には後遺症はありますか?」
今、森田家全体が彼一人で支えている状態だった。
もし彼が倒れてしまえば、他の企業がすぐに森田家を飲み込んでしまうだろう。
矢崎粟は言った。「時間を見つけて道院に行き、経験のある玄学師に寒気を払ってもらいなさい。あなたの体にはまだ寒気が残っていて、それを除去しないとリウマチ系の病気にかかるリスクがあります。」
「ありがとうございます!」森田廣はすぐに頷いた。
もちろん彼は自分の体を軽視するつもりはなく、すぐにでも行くつもりだった。
矢崎粟は続けて言った。「あなたの運命の劫難は過ぎ去り、もう命の劫はありません。私と三家との同盟はここで終わりです。今後何かあっても、私に頼らないでください。」
堀信雄と森村邦夫は逮捕され、残る南鹰派はこの三家とはあまり関係がない。
だからこそ、矢崎粟は同盟の終了を提案したのだ。
傍観していた矢崎政氏は、矢崎粟の言葉が自分にも関係していることに気づき、一瞬戸惑った。
正直なところ、彼は心の中で矢崎粟に依存していた。