後藤大師はうなずき、顔に笑みを浮かべた。「あなたが同意すれば、いつでも解除できますよ。ただし、まず数滴の血をいただく必要があります。そうすれば成功率が高まりますから」
小林博は一瞬固まり、何も言わなかった。
以前、矢崎家の兄弟と飲みに行った時、矢崎泰から玄学師が血を求めてきたら注意するよう言われていた。
おそらく矢崎粟を狙ったものだろう。
小林博は矢崎粟のいとこだが、彼の血は矢崎粟とも強いつながりがある。
この点について、矢崎泰は小林家の三兄弟にも強調していた。万が一のことがない限り、自分の血をどんな玄学師にも渡すべきではないと。
後藤大師はしばらく待ったが、小林博が黙っているのを見て尋ねた。「何か疑問がありますか?」
田中千佳も焦って促した。「息子、今日解除しましょう。せっかく来たんだから、早く解除した方があなたのためよ。後遺症が出たらどうするの?」
もし一生治らなかったら、それこそ大変だ。
小林博は少し考えてから、ゆっくりと言った。「今日は少し体調が優れないので、状態があまり良くないんです。数日後にまた来ます」
彼は矢崎粟に相談してから決めたいと思った。
血を渡しても矢崎粟に害がなくても、もし自分自身が傷つけられたらどうするか?
血に関することは、慎重にならなければならない。
後藤大師は少し驚いたが、笑いながら言った。「問題ありません。私に時間があれば、必ずあなたの呪術を解除しますよ」
彼は立ち去った。
田中千佳は焦って小林博の腕を引っ張った。「息子、なぜさっき呪術を解除しなかったの?」
小林博は言った。「母さん、帰ってから話すよ。まずは帰ろう」
帰り道で、田中千佳は再び尋ねた。「息子、正直に言って、さっきなぜ呪術を解除しなかったの?」
小林博は考えたが、結局矢崎粟のことは言わなかった。
彼は言った。「私の血を手に入れたら、玄学師は良くないことをするかもしれない。他の玄学師に相談してから決めたい。罠にはまらないようにね」
「そうね、そうね!」田中千佳はすぐに同意した。「あなたの言う通りよ。未来の社長として、慎重にならなきゃ。小林家の二房はあなたに頼っているのよ」
一方、山の上の部屋では。
後藤大師が部屋に戻ると、すぐに顔が曇った。「分かっていない奴だ!」
解毒術を望まないなら、一生苦しめばいい!
……