第147章 トラウマ

声は慵懶で少し掠れた磁性を帯び、この世にも稀な美しさを持ちながら眉を上げて傲慢な表情を浮かべる顔と相まって、言い表せないほどの色気があった。

景雲昭は二度の人生を生きてきたが、黎少雲ほどの容姿、声、体格、あらゆる面で優れた人物を見たことがなかった。もっとも、前世の生活圏は狭く、人と会うのは学校か刑務所くらいだった。

黎少雲も今は起き上がれないので、景雲昭はそのまま座り込み、リンゴを手に取った。「食べる？」

「本当に何も言うことはないのか？」黎少雲がもう一度尋ねた。

景雲昭は聞こえなかったふりをして「じゃあ私が食べちゃいます」

黎少雲は口角を引きつらせながら、目の前の少女を見つめた。景雲昭が若いのだから、大人である自分が少しは譲歩すべきだと考え、笑いとも何とも取れない表情を浮かべて「この事故については、お前と無関係というわけではないんだが……」

景雲昭の手の動きが止まった。「大型トラックを運転していたのは私じゃありませんよ」

「分かっている」黎少雲は口角を上げた。「だがお前に蹴られてから、精神状態が良くなくて、運転手に車で色々と回らせていたんだ。未成年とはいえ、お前は医師だから、男にとって何が大切かは分かるだろう」

「元々心に障りがあったところに事故まで遭って、我が黎家は断絶の可能性があるかもしれない……」

黎少雲は悪魔に取り憑かれたかのように、なぜこんな場違いな話をしているのか自分でも分からなかった。

しかし彼は常に自分の直感を信じていた。景雲昭に対する好奇心、興味、そして彼女を見ると気分が良くなることから、身分を下げても彼女と親しく付き合いたいと思っていた。

彼女はシンプルでありながら強靭さを持っていた。黎少雲は景雲昭が杜霖のような存在になれると考え、華寧県での数少ない友人の一人になれると思っていた。

ただし、何か違うものがあった。おそらく彼女の年齢のせいだろう。

とにかく、事故に遭った瞬間でさえ、なぜか数回しか会っていないこの少女のことが気になっていた。それは既に自分の身内として認めているということだろう。自分の身内なら、攻略し、取り込み、感情を育むのは当然のことだった。

残念ながら年齢が若すぎて、こんな話をする自分に罪悪感すら覚えた。

景雲昭は目を見開いたまま、黎少雲の言葉を全く信じていなかった。