甘松柏は本当に怒り心頭に達していた。
彼は秦志學が善人ではないことを前から知っていたので、怒りはするものの、この畜生のために体を壊すわけにはいかなかった。
しかし、この劉部長は人間のはずだろう?しかも、この若造は彼が幼い頃から見守ってきた子供だ。成長してからは疎遠になったとはいえ、彼と劉院長の関係は悪くなかったのに、この孫がとやかく言う立場にあるのか?
秦志學には腹が立って歯ぎしりするほど憎かったが、この劉部長には心が痛むばかりだった。
これが医者というものか!
彼が小さい頃、祖父や父は人としての道を教えてから、医術を教えたものだ!劉部長のこの態度は彼の人格を侮辱している!医の倫理がないと認めろというなら、命を取られる方がましだ!
劉部長は頬を押さえながら、甘松柏を睨みつけた。彼の長老のような威厳に、内心自信が揺らいでいたが、それ以上に怒りが込み上げてきた。どう言っても自分は部長であり、将来この病院を継ぐ身なのだ。甘松柏がこれだけの人前で自分の顔を叩くなど、それは彼の面子を潰すことであり、今後どうやって威厳を保てというのか?
「甘先生!分別をわきまえてください。あなたの件は我が病院の名誉を著しく傷つけました。賠償を要求することもできるのです!しかし、あなたの年齢を考慮して、そこまでの措置は取りません。今日中にこの人の妻を見つけ出し、彼と私に謝罪すれば、この件は水に流します。それくらい簡単なことでしょう?」と劉部長は大声で怒鳴った。
秦志學の気分は大分良くなっていた。上司を呼んできたら事態の収拾が難しくなると思っていたのに、この若い部長が意外な援軍となり、甘松柏と口論を始めたのだ!
甘松柏は怒りで言葉を失っていた。
やはり年齢には勝てず、養生に努めていても、こんな連続的な苦労には耐えられなかった。
突然めまいがし、頭痛が激しくなり、劉部長を指差す手が激しく震え、目を走らせると秦志學の口元に浮かぶ冷笑を見て、とうとう耐えきれず「どん」と椅子に倒れ込んだ。
瞬時に、周りの人々は慌てふためき、急いで救助に向かった。
劉部長は眉をひそめ、甘松柏が芝居を打っているのだと考えた。
さっき自分を殴った時はあれほど力強かったのに、そんな虚弱な人のはずがない。きっと責任逃れのために仕組んだ策略に違いない。