一瞬のことで、孫顏は驚いて数歩後ずさりし、その場に倒れ込んで、全身を震わせながら涙をポロポロと流し始めた。
崔均は真っ先に駆け寄り、そのムカデを見た途端、足がガクガクと震えた。「もう勝負はやめましょう……」
こんなもので勝負なんてできるはずがない。ムカデ?従姉にこんな武術を調合させるなんて?こんなものは他の人にやらせればいいじゃないか?崔家には大勢の従業員がいるのに!
しかし崔占先は即座に言った。「だめだ!勝負は続行する!」
今ここで一か八かの勝負に出れば、後の二戦で勝てるかもしれない。そうすれば引き分けとなり、息子の将来にも影響が出ないはずだ!ここまで来て引き下がるなんて、そんな道理があるものか?
それに、ただのムカデじゃないか?ここにいる薬剤師たちで、誰一人として経験がない者などいないだろう?他の人ができて、なぜ孫顏にはできないというのか?
孫顏は首を振り続けた。彼女にはできない。
そもそも、このムカデをどう調合すればいいのかも分からない。経験がないのだから、きっと間違えてしまう。そんな状態で、なぜまた勝負をしなければならないのか?こんな気持ち悪いものに触れなければならないのか?
これまでの年月、彼女が薬の調合を学んできたのは、それが好きだったからではない。ただ、それが十分な利益と名声をもたらしてくれたからであり、その時は今のようにここまで必死になってする必要もなかったのだ!
孫顏が頑として前に出ようとしない様子を見て、崔占先はほとんど気が狂いそうになった。「孫顏!崔家がお前を何年も養ってきたのに、これがお前の恩返しか?!」
「私にはできません!おじさま、どうせ負けるんですから……」孫顏は顔を蒼白にして完全にパニックに陥っていた。
どうして景雲昭に負けてしまったのか、彼女にも分からなかった。まるで夢でも見ているようだった。
一方、景雲昭の方は騒ぎが聞こえないかのように、静かにムカデを洗い、一つ一つ頭と尾を取り除いていた。その様子は静かで穏やかだったが、かえって人々の背筋を凍らせるものだった。
その場にいた人々の中で、若い年齢の者を除けば、ほとんどがこういったものを処理した経験があったが、景雲昭のように眉一つ動かさず、異常なほど冷静に作業する者はいなかった。
景雲昭が冷静なのは、徐おじいさまの訓練の賜物だった。