第455章 ちょっと危険

その家族は子供を抱きしめて手放そうとせず、皆が涙にくれていた。見物人たちはそれを見て、騙されるほど愚かではないと気付いた。

その子供は先ほどまで激しく泣いていたが、今は母親に慰められてだいぶ落ち着いていた。これが実の親子でないとは、誰が信じるだろうか？

しかし、この時皆が騙されたことへの怒りを感じていた。

先ほどの人身売買組織の二人の演技はなんと巧みだったことか。頭を地面に打ち付けて、この家族に劣らないほどの涙を流していた。アカデミー賞候補に推薦されれば、きっと選ばれただろう！怒りは怒りとして、先ほど悪事に加担してしまった自分たちの行動を思い出すと、皆恥ずかしくなってきた。

「お嬢さん、本当に申し訳ありません。先ほど私たちは…」誰かがため息をつきながら、困ったように口を開いた。

景雲昭は首を振った。「皆さんも善意で行動したのですが、今後このような事態に遭遇した場合は、どちらも行かせずに、すぐに警察に通報するのが最善だと思います。」

双方とも一理あるこのような状況では、どちらを信じるべきか判断が難しい。やはり警察に通報するのが最良の方法ではないだろうか？

このような正義感が何度も発揮されれば、冤罪も増えてしまうだろう。

群衆は恥ずかしそうに頷いた。

皆おじさんおばさん世代なのに、若い娘に諭されるのは確かに面目ない。ただ、幸いにもこの子は無事だった。もし本当に連れ去られていたら、真相を知った後、一生後悔することになっただろう。

景雲昭は話し終えると、腕に触れた。そこで初めて肘に痛みを感じた。

先ほどこの子の泣き声に焦ってしまい、少し強く当たってしまったようだ。

そうこうしているうちに警察が到着し、人身売買組織の二人の惨めな姿とワゴン車を見て驚いていた。しかし、さらに彼らを驚かせたのは景雲昭だった。

まさか若い娘が人を救出したとは。一人の犯人ならまだしも、二人相手とは。彼女を褒めるべきか、注意すべきか迷うところだった。

「君を知っている。確か景雲昭さんだよね？よくやってくれた。でも今後は安全に気を付けてほしい。道路を横切ったり車から飛び降りたりしたと聞いたが、それは危険すぎるよ…」警官の一人が言った。

景雲昭は警察署でも知られた存在で、その際立った容姿と数ヶ月前の有名な出来事もあり、彼女を知る人がいても不思議ではなかった。