第593話 プレゼント

蘇楚の笑顔は陽気で若々しく、とても人を魅了する力があった。

外では甘堇辰がソファに座って真面目な顔をして装っていたが、実は盗み聞きをしていた。蘇楚が目的を達成したのを見て、口元にかすかな笑みを浮かべながら、さりげなく果物を洗って持ってきて、黙って置いてから立ち去ろうとした。「雲昭、明日から特訓を始めよう。朝の五時に玄関で待ってるからな」

蘇楚は景雲昭に向かってウインクをして、悪戯っぽく笑った。

景雲昭も甘堇辰のクールぶった態度に思わず笑みがこぼれた。

その時、蕭海清はすでに寧市に向かい、ジェームズの病室にいた。

「物は持ってきたのか？」ジェームズは眉をひそめ、蕭海清を見るなり態度が明らかに変わった。

ジェームズの傍らにはもう一人立っていた。蕭海清は実物を見たことはなかったが、写真で見たことがあった。

たとえ調べていなくても、彼の期待に満ちた眼差しと、彼女に対して全く違和感を感じていない態度から、この人物が宿泊場所を提供した卓海洋、海洋食品株式会社の社長で、この件の直接の受益者であることがすぐに分かった。

蕭海清は彼を一瞥して、口角を上げた。「こちらが卓さんですね。さすが成功者という感じですが、ちょっと違いますね」

事件が起きてから、景雲昭はこの人物について調べていた。

資料は全て彼女に見せられていた。この卓海洋は今年二十七、八歳で、家業を継いで会社の社長となった。以前は主にお酒の商売をしていたが、市場が不景気で、彼の酒は特別な味わいがなく、ブランド力もなく、宣伝に大金を使う余裕もなかったため、商売は次第に悪化していった。最後には思い切って方向転換し、新商品も開発した。それらの食品は大ヒットとまではいかなかったものの、まずまずの売れ行きだった。

相手は一瞬戸惑い、すぐに笑顔を見せた。「蕭お嬢様」

「先日、ジェームズさんと一緒に卓さんのお宅に伺いましたが、とても清潔で居心地の良いお家でしたね。ただ、少し寂しい感じがしましたが、卓さんは奥様やお子様はいらっしゃらないんですか？」と蕭海清は続けた。

彼女の目には火花が散るような光が宿り、理性が飲み込まれそうになっていた。

しかし毎日、一瞬一瞬、彼女は自分に言い聞かせていた。冷静で清明でいなければ、より良く生きることはできない。そして、彼女を傷つけた人々の目的を達成させてはいけないのだと。