第032章:「用事でも?」

佐藤薫は瞬時に毛を逆立て、「ちょっと!黒歴史は言わないで!」

最初に坂本真理子と知り合った時、彼女は彼の外見に一目惚れしたが、付き合えば付き合うほど幻滅していった。

坂本真理子のことを好きだったことも、彼女の触れてはいけない黒歴史となった。

坂本加奈は軽く笑って、「わかった、言わないわ!」

佐藤薫はバッグから傷跡クリームを取り出して彼女に渡し、「うちの親戚がエステサロンで働いているの。特別にもらってきたわ。毎日塗れば、傷跡はすぐに消えるわよ」

「ありがとう」坂本加奈は遠慮せずに受け取り、スケッチブックバッグに入れた。

佐藤薫は彼女と一緒にキャンパス内を歩きながら尋ねた。「そういえば、今年の誕生日はどうするの?」

「え?」坂本加奈はすぐには反応できなかった。

佐藤薫は手を伸ばして彼女の頭を撫でながら、「忘れてたでしょ。もうすぐ中秋節だし、その後があなたの誕生日じゃない」