第71章:彼女は黒川浩二を好きだけど、黒川浩二は彼女を好きになるのか?

iPadはロック画面ではなく、ホーム画面の壁紙は男性が少女の傷の手当てをしている絵でした。漫画風のタッチで描かれていましたが、佐藤薫は一目で絵の中の人物が誰なのかわかりました。

「ほら!まだ知らんぷりするの?」

坂本加奈は明らかに動揺した様子で、iPadをロックしてしっかりと抱きしめ、小さな唇を尖らせて「蘭ちゃん……」と言いました。

佐藤薫は指でふくれた頬をつついて、すぐにしぼんでしまいました……

「黒川浩二のことが好きなら好きでいいじゃない、認めるのに何を恥ずかしがってるの?」

坂本加奈は机に伏せて、カールした長いまつ毛が少し震え、気持ちが沈んでいる様子で「蘭ちゃん、わからないよ……」と言いました。

佐藤薫も机に伏せて、我慢強く「じゃあ、話してみて」と言いました。

坂本加奈は横目で彼女を見て、唇を噛んで「蘭ちゃん、私もいつから始まったのかわからないの。気づいた時にはもう遅くて、でも私は彼のことを好きになっちゃいけないはずなの」