坂本真理子と佐藤薫は目を合わせ、同時に頭の中で同じ考えが浮かんだ:まずい、この二人はショックで頭がおかしくなってしまったのでは!!
密室の明かりが突然ついて、スピーカーから係員の声が聞こえてきた。「おめでとうございます。皆様は『真夜中の赤いドレス』密室からの最初の脱出成功者です。これからこのストーリーについて簡単に説明させていただきます……」
『真夜中の赤いドレス』は、愛し合って結婚した夫婦の物語です。結婚後、可愛らしい娘が生まれましたが、夫は仕事に追われ、妻と娘を疎かにしていました。妻との間に軋轢が日に日に増え、やがて夫は家に帰らなくなりました。妻も夫の逃避的な態度に耐えられず、毎日外出して気を紛らわすようになり、5歳の娘は家政婦と二人きりで過ごすことになりました。
家政婦の不注意により、小さな女の子が椅子に乗って棚の上の携帯電話を取ろうとした時に転落し、近くの鏡にぶつかって大動脈を切断、失血多量で亡くなってしまいました。
娘の死後、夫婦は互いを責め合い、憎み合い、最終的に離婚して引っ越してしまいました。小さな女の子の魂は、最も好きだった人形に宿り、この家に閉じ込められたまま、いつか両親が戻ってくるのを待ち続けていました。
しかし日々が過ぎ、年月が流れても、両親は一度も戻ってきませんでした。小さな女の子の魂は次第に悪霊と化し、この家に引っ越してくる人々を脅かし続けました。最後に引っ越してきた可愛らしい女の子は、人形に怯えることなく、むしろ人形の血痕を拭き取り、外れた首を直してあげました。
小さな女の子は、その女の子の優しさに心を打たれ、両親が永遠に戻ってこないことを理解し、恨みを手放して転生していきました。
その女の子こそが坂本加奈で、彼女の勇気と優しさがこの密室から脱出するための鍵だったのです!
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ついに恐ろしく陰気な密室から脱出し、坂本真理子と佐藤薫は深いため息をつき、まるで地獄から人間界に戻ってきたかのように、空気までも甘く感じられました。
坂本加奈はあまり話さず、時折黙り込んでいる男性を横目で見ていました。
係員が預かっていた携帯電話や財布、鍵などを持ってきて、さらに坂本加奈に『真夜中の赤いドレス』と同じ人形をプレゼントしました。これは最初の脱出成功者への賞品でした。