第104章:「昨夜、着替えを手伝ってくれたのは……」

黒川浩二は黙って何も言わなかった。

坂本加奈は自分のレモン水を見下ろしながら、昨夜最後に何が起こったのか気になって仕方がなかった。

困ったことに、どうしても思い出せない。

黒川浩二は静かに彼女の眉をひそめる様子を見つめていた。時に悔しそうに、時に挫折した表情を浮かべ、時には少し嬉しそうな表情を見せる。

少女の心の内は分からないが、彼女が悩んでいることは自分に関係があるのだろうと漠然と感じ、思わず気分が良くなった。

坂本加奈は一杯の水を飲み干しても昨夜のことを思い出せなかったが、彼が承諾したかどうか確信が持てず、迷った末に自ら切り出した。「昨夜、私があなたを追いかけることを許してくれたよね!」

黒川浩二は一瞬驚き、すぐに理解した。彼女は記憶が途切れているのか?

坂本加奈は彼が黙っているのを見て、すぐに真面目な顔つきになり、厳しく言った。「あ、あなた...私が酔っていたから覚えていないと思わないでください。覚えていますよ!」