「年末は会社が忙しくて、旦那様がさっき電話で、もうすぐ帰ると言っていました」と管理人は答えた。
坂本加奈は再び外の大雪を見つめた。雪が降っている、黒川浩二も帰ってくるはずだ。
心が何かで満たされ、喜びが抑えきれなかった。
黒川浩二は確かに15分後に帰ってきた。玄関から入ってくるまでたった2分だったが、黒いコートには雪が舞い、黒髪にも雪が付いていた。
坂本加奈は物音を聞いてすぐに玄関へとタタタッと走っていった。「お帰りなさい」
黒川浩二は玄関に入るなり少女の明るい声を聞き、気分も良くなった。「何がそんなに嬉しいの?」
「雪が降ってるの」と坂本加奈は素直に答えた。「それに、あなたが帰ってきたから」
黒川浩二の心臓がビリビリと感じ、電撃を受けたかのように、薄い唇が思わず上がった。