第157章:とても卑しい

残りの言葉を言い終える必要はなく、会場の審査員たちは既に状況を理解していた。

白川晴香は唇を噛みしめて黙り込み、顔色が青白く変化していた。

「申し訳ありません、私が不注意で見間違えてしまいました……」

彼女は自分の見間違いを認めるしかなく、これ以上この点にこだわることはできなかった。さもないと、絵に手を加えたことがバレてしまう!

客席で黒川詩織が好奇心を持って尋ねた:「あの人は誰?なんだか加奈を狙い撃ちにしているように見えるんだけど!」

「『ように見える』なんて遠慮する必要ないわよ」佐藤薫は白川晴香を睨みつけ、イライラした様子で言った:「あの子は加奈の元カレの元カノよ。この前バーで加奈をいじめようとしたの。まるで蝿みたいにうるさくてね!」

黒川詩織は「あぁ」と声を上げ、白川晴香を見る目が嫌悪感に変わった。「元カレの元カノなんて良いものじゃないわ。二人で永遠に縛り付けられてればいいのに。私の義姉さんを困らせるなんて、頭がおかしいわ!」

佐藤薫は彼女のぶつぶつ言葉を聞いて、思わず笑みを漏らした。

加奈の義理の妹は傲慢どころか、むしろ可愛らしいじゃない!

議長は口元に笑みを浮かべながら、目には冷たさを残したまま淡々と言った:「白川お嬢様は留学されたと伺っておりましたが、どうやら海外の景色があまりにも美しく、お嬢様は留学の目的を忘れてしまわれたようですね。」

会場中が笑い声に包まれた。嘲笑、面白がる声、様々な笑い声が入り混じっていた。

白川晴香は顔を真っ赤にして降壇し、自分の席にも座れず、その場を去った。

議長は黒川グループ社長の黒川浩二が坂本加奈にトロフィーを授与すると発表した。

会場は沸き立ち、坂本加奈も驚いて固まった。横を向くと、黒川浩二が黒いスーツを着て、その長い脚をスーツパンツで包み、一歩一歩自分に向かって歩いてくるのが見えた。

「きゃーーー!」黒川詩織は嬉しそうに叫んだ。「やっぱり兄さんは来てくれると思ってた!」

佐藤薫は耳を押さえ、ようやく加奈が自分からの電話を受けるときの気持ちが分かった。

でも、黒川浩二のこの作戦は見事だわ!

黒川浩二は司会の女性から受け取ったトロフィーを坂本加奈に向けて差し出し、まるで初対面の他人のように薄い唇を開いて言った。「おめでとう、坂本くん。」