坂本加奈と黒川浩二は目を合わせ、二人とも老婆がなぜそのように言うのか理解できなかったが、それでも頷いて承諾した。
坂本おばあさまはほっと息をつき、疲れた表情で元気なく言った。「もう大丈夫だから、みんな戻りなさい。することがあるでしょう。ここに立ち尽くさないで。」
「おばあちゃん……」
坂本加奈が口を開いた途端に遮られた。「言うことを聞きなさい。」
口に出そうとした言葉を飲み込んで、「じゃあ、また今度お見舞いに来ます。」
「今度も来なくていいの。若い人は若い人らしくすることをしなさい。この老婆のことばかり気にかけて、大切な青春の時間を無駄にしないで。」
坂本おばあさまは懇々と諭した。
坂本加奈は説得できず、素直に頷くしかなかった。
上野美里は姑の世話をしようと残ろうとしたが、追い返された。おばあさまは一生気丈で、周りの人に迷惑をかけたくなかった。