第170章:婿

坂本加奈と黒川浩二は目を合わせ、二人とも老婆がなぜそのように言うのか理解できなかったが、それでも頷いて承諾した。

坂本おばあさまはほっと息をつき、疲れた表情で元気なく言った。「もう大丈夫だから、みんな戻りなさい。することがあるでしょう。ここに立ち尽くさないで。」

「おばあちゃん……」

坂本加奈が口を開いた途端に遮られた。「言うことを聞きなさい。」

口に出そうとした言葉を飲み込んで、「じゃあ、また今度お見舞いに来ます。」

「今度も来なくていいの。若い人は若い人らしくすることをしなさい。この老婆のことばかり気にかけて、大切な青春の時間を無駄にしないで。」

坂本おばあさまは懇々と諭した。

坂本加奈は説得できず、素直に頷くしかなかった。

上野美里は姑の世話をしようと残ろうとしたが、追い返された。おばあさまは一生気丈で、周りの人に迷惑をかけたくなかった。

病気になってもそれは変わらなかった。

数人が病室の外に立ち、坂本加奈はまだ心配で、ドアの窓から中を覗き込んでいた。

坂本健司はため息をつき、「おばあちゃんはいつもこんなに頑固だよ。」

言葉を途切れさせ、目を坂本加奈に向けた。心配が顔に表れていたが、口に出すことができなかった。

黒川浩二が突然口を開いた。「おばあさまはネットの件をどうやって知ったんですか?」

岩崎が真っ先に投稿を削除し、坂本真理子もネット上の世論の発酵を抑えていたのに、理屈的におばあさまが知るはずがなかった。

坂本加奈と坂本真理子は同時に両親を見つめ、黒川浩二は彼らの心の疑問を代弁した。

「詳しいことは私もわかりません。」上野美里が答え、考え込んで言った。「介護士の話では、おばあさまが携帯を見ていて突然興奮して、何かショックを受けたようです。」

「おばあちゃんの携帯は?」坂本加奈が尋ねた。

「私が持っています。」上野美里はバッグから老婆の携帯を取り出した。再びショックを与えないように、この数日は電子機器に触れさせないつもりだった。

坂本加奈は携帯を受け取り、坂本おばあさまは老眼のため、文字サイズを最大に設定してあった。WeChatを開いても特に変わったメッセージはなかった。

通話履歴も確認したが、坂本健司たちの電話以外に見知らぬ人からの電話もなかった。