第173章:借り

車の中。

坂本真理子は膝の上にノートを置き、バックミラーをちらりと見た。

「本当に林波留を許すつもり?」

明らかにこの一連の出来事の首謀者は林波留で、白川晴香は共犯だった。

「そんなことないよ!」坂本加奈はきっぱりと答え、少し困惑した様子で続けた。「あんなに悪い人なのに、なぜ許すの?」

「じゃあ、最後にあの女に言った言葉は何だったの?」坂本真理子は理解できない様子だった。

坂本加奈は目をパチパチさせ、無邪気な表情で「あの人は林翔平のことが大好きだから、ああ言わなかったら、林波留のために罪を被るかもしれないでしょう?」

坂本真理子は一瞬驚き、しばらくして理解した。「離間を画策したってこと?」

坂本加奈は唇を噛んで笑った。「離間って何?分からないわ!」

坂本真理子は「ちっ」と舌打ちをした。「こいつ、ずるいな。」

坂本加奈は聞こえなかったふりをして、黒川浩二の方を向いた。「お腹すいた、スカイガーデンで食事したい。」

「いいよ。」珍しく彼女が食事を欲しがるなら、スカイガーデンどころか月まででも連れて行くつもりだった。

「俺もお腹減った。」二日間も忙しかったせいで、死ぬほど腹が減っていた。

「あなたは警察に通報しないといけないでしょう?警察のお巡りさんの調査に協力しないと!」坂本加奈は唇を尖らせた。

坂本真理子:?

「お前、本当に実の妹か?」

坂本加奈は首を振った。「ママが前に言ってたじゃない、あなたは養子だって!」

坂本真理子:「……」

黒川浩二は野村渉に路肩に停車するよう指示し、坂本真理子を降ろさせ、そっけなく言った。「お疲れ、義兄さん。」

坂本真理子:「……」

くそっ!犬は人間になれないかもしれないが、お前は間違いなく犬だな!

路肩で怒りながら石を蹴り、しばらくして納得した。

まあいい、あいつらと行っても美味しい料理を食べられるのか、恋人たちの甘い雰囲気に耐えることになるのか分からないし、先に仕事を片付けて、その後でたらふく食べた方がいい!

……

スカイガーデンのいつもの席で、テーブルの上には坂本加奈の好きな料理が並べられた豪華な皿が置かれていた。

彼女はお腹が空いていたにもかかわらず、とてもゆっくりと食べ、とても行儀よかった。