第185話:お父さん

これは黒川詩織の思惑通りだった!!!

森口花と黒川詩織が予約した回は人が少なく、彼らはすぐに入ることができた。

佐藤薫は絵画に興味がなく、休憩スペースでスマートフォンをいじったり、ゲームをしたりしていた。

坂本加奈は一人でギャラリーに入り、壁に掛かった絵をゆっくりと鑑賞し、気に入った作品の前では足を止めて、しばらく見入っていた。

横から誰かが近づいてきて、坂本加奈は反射的に後ろに下がって道を譲ろうとしたが、背中が壁にぶつかり、足も何かを踏んでしまった。

「すみません、申し訳ありません……」

振り向くと少年の整った顔立ちが目に入ったが、その表情は少しふてぶてしげだった。「この絵、そんなに良かった?見入っちゃってたみたいだけど!」

坂本加奈は申し訳なさそうな目で、再び謝罪した。「本当にすみません、わざとじゃなくて。」