「えっ?」坂本加奈は不思議そうな表情を浮かべた。
「子供が悪いことをしたら、甘やかしてはいけない」
「でも——」
坂本加奈の言葉が終わらないうちに、黒川浩二はお風呂を済ませて着替えてきた中谷陸人を見て、冷たい声で尋ねた。「アトリエを散らかしたのは、お前か?」
中谷陸人は瞬きをして、おびえながらうなずいた。
「自分で散らかしたのだから、自分で片付けなさい」黒川浩二の表情は厳しく、笑顔のない時は更に威厳があって怖かった。
「それと坂本おばさんに謝りなさい!」
「僕、わざとじゃないもん!」中谷陸人は言い訳をした。「彼女だって……」
黒川浩二は冷たい目を向けた。
中谷陸人はすぐに唇を噛み締め、涙を目に溜めて、赤くなった鼻をすすった……
坂本加奈は彼の様子が可哀想に見えて、口を開こうとした。