第210章：夢遊病

泣くことも笑うこともなく、言葉も発しない。

表情は虚ろで無気力、まるで魂のない生ける屍のようだった。

彼は本当に加奈の病気が再発するのではないかと心配していた。

黒川浩二は漆黑の瞳に不安を浮かべながら、居間にいる少女を一瞥した。今の彼女の頭上には大きな暗雲が立ち込め、豪雨が降り注いでいるかのようだった。

いつになったら暗雲が晴れ、豪雨が止み、あの愛らしい顔に太陽のような笑顔が戻るのだろうか。

「俺がいる限り、彼女を昔の状態に戻すことは許さない」彼は固く決意した。

坂本真理子は深く息を吐き、話題を変えた。「林家のことは私に任せてもらえないか？」

確かに黒川浩二は今や加奈の夫として、加奈の仇を討つのは当然のことだが、これはあくまでも坂本家の問題だ。坂本家の長男である自分が、半ば部外者の黒川浩二にこの件を任せるのは、自分の無能さを示すようなものだった。