第216章:寵愛を恃む

「ごめんなさい……」

坂本加奈は今日、彼の説明や謝罪を聞きに来たわけではなかった。

おばあちゃんの死は彼が原因で、「ごめんなさい」の一言で済むことではなかった。

「林翔平さん、謝らなくていいわ。謝るべき相手は私のおばあちゃんで、私じゃない」坂本加奈は機械的に唇を引き攣らせた。「でも、もう聞くことはできないわね」

林翔平は唇を強く噛みしめ、罪悪感と不安に満ちた眼差しで彼女を見つめた。

「林翔平さん、あなたが誰と揉め事を起こしたのか、なぜ内村里美さんにこの件が私たちの仕業だと誤解させたのか、分からないわ」

坂本加奈は目を伏せ、自分の爪を弄びながら、彼の腫れ上がった青あざのある顔を見上げた。瞳には感情の揺らぎは一切なかった。

「でもこの件は確かに私たちとは無関係よ。あなたが殴られた理由なんて気にしないけど、おばあちゃんが亡くなったこと、このままじゃ済まないわ」