坂本加奈は窓の外に咲き誇る花火と、繰り返し流れる字幕を見つめ、思わず頬を覆い、興奮で声を上げないように我慢した。
澄んだ瞳は花火の映り込みでより一層輝き、愛らしい顔には喜びと感動が溢れていた。
黒川浩二は彼女がよく見えるように、立ち上がって彼女を空いているスペースへと導いた。
坂本加奈はガラスに寄りかかり、瞬きしながらこの光景を見つめた。「とても綺麗!」
「気に入った?」耳元で男の低い声が響いた。
黒川浩二は彼女の後ろに立ち、とても近くで、息遣いまでもが首筋にはっきりと感じられた。
坂本加奈は躊躇なく頷いた。「うん、とても綺麗...」
墨都では大きな祝日以外、こんなに綺麗な花火は見られないのだから!
黒川浩二は彼女の脇の下から腕を回して抱きしめ、唇を彼女の耳に寄せて、低くかすれた声で言った。「お誕生日おめでとう、かなちゃん」
暖かい風に吹かれて坂本加奈の体は柔らかくなり、声も思わず甘くなった。「あ、あなたまでもそう呼ぶの」
蘭だけが時々そう呼んでいたのに。
黒川浩二は低く笑った。「私がそう呼ぶのは嫌?」
「好...き!」坂本加奈は頬を赤らめながら答えた。彼の声が素敵で、かなちゃんという言葉を発する時の言いようのない艶めかしさに、心が震えた。
黒川浩二は手で彼女の頬を包み、かがんで唇に軽くキスをした。
唇を開かせ、深く沈んでいった。
過度な侵略性はなく、ほどよい加減で。
黒い瞳は温かく、欲望に満ちて彼女を見つめた。「かなちゃん、この誕生日は楽しかった?」
坂本加奈は潤んだ瞳で、魅惑的に軽く頷いた。
蘭はいないけれど、彼が側にいてくれて、とても嬉しかった。
黒川浩二の唇がさらに下がり、囁くような低い声で言った。「じゃあ、私も嬉しくさせてくれる?」
坂本加奈は一瞬で彼の言葉の意味を理解し、目に羞恥の色を浮かべながら、小さな声で言った。「うん」
...
空一面の暗雲で、星一つ見えなかった。
西村雄一郎は車の中で坂本加奈に電話をかけたが、誰も出なかった。
助手席に置かれた美しく包装されたプレゼントを横目で見て、眉間にいらだちを募らせながら、月見荘の玄関を見上げた。
2時間前、彼がインターホンを押したとき、使用人は彼女が不在だと言った。
この時間に家にいないなんて、彼女はどこにいるんだ?
あの男と誕生日を祝っているのか?