今行われているゲームは、男女がお互いを抱き合って、体で風船を割るというものだ。
5分間で最も多くの風船を割った人が、最新のスマートフォンを獲得できる。
バーのような場所では、ほとんどが気分転換や恋愛目的で、誰が本気で携帯電話のために真剣になるだろうか。
男たちは風船が割れる前の女性の恥じらいと、風船が割れた後の一瞬の接触を楽しむだけ。あるいは風船が割れた瞬間に美女を抱き寄せ、後は自然の成り行きというわけだ。
深木雫は黒いスパンコールのキャミソールドレスを着て、40歳くらいの男性と密着していた。
二人の間の風船は、まるで鉄球のようだった!
男性の表情は冷たく不機嫌で、その目は刃物のように次の瞬間にも彼女を殺せそうな鋭さを持っていた。
深木雫はイライラして言った。「もっと力を入れてよ!」
1分近く経っても風船が割れず、彼女のスマートフォンは手に入らなくなりそうだった。
男性は暗い表情で何か言おうとした時、突然スラリとした人影が大股で近づいてきた。
何も言わずに深木雫の手首を掴み、引っ張って歩き出した。
深木雫は一瞬呆然として、「私の風(ケー)船(タイ)……」
「パン!」
風船は床に落ち、傍らの人に踏まれて割れた。
深木雫は踏み潰されたのは風船ではなく、自分の心だと感じた。
振り向いて怒りを込めて言った。「薄田正、何を発狂してるの!」
彼女は必死に抵抗し、やっと鉄のような手首の束縛を振り払うと、白い手首に薄い痣が浮かんでいた。
薄田正は彼女の服装を見つめ、まるで彼女の体に穴を開けたいかのようだった。
「何を着てるんだ?それにここで何をしてる?」
「私が何を着ようと、あなたに関係ないでしょ!」深木雫は負けじと言い返した。「バーに来るのは遊びに決まってるじゃない。それとも、あなたみたいに売春婦を呼ぶとでも?」
薄田正の顔色は瞬時に青ざめ、歯を食いしばって一字一句言った。「何度も言ってるだろう。あの女が何をする人か、俺は全然知らなかったんだ!」
「その人が何をする人かは、あなたとも私とも関係ない!」薄化粧の深木雫の顔に苛立ちが浮かび、身を翻して立ち去ろうとした。
薄田正は彼女の手首を掴んで、「どこに行く?」
「関係ない!離して……」深木雫は彼の手を外そうとしたが、外れないので怒って噛みついた。