第313章:自ら手を下す

「よし、私たちは先に帰るわ。明日また退院の迎えに来るから」黒川詩織は坂本加奈を見上げて言った。「お嫂さん、お疲れ様。お兄さんのことをよろしくお願いね」

坂本加奈は頷いて、固く誓うように言った。「ちゃんと面倒を見るから、安心して」

森口花は先に黒川詩織を連れて帰った。

車の中で、黒川詩織は窓の外を見つめながら、清楚な顔に霧がかかったように、黙り込んでいた。

「お兄さんは大丈夫だから、心配しないで」森口花は彼女が黒川浩二のことを心配しているのを知っていて、小さな手を握りながら優しく慰めた。

「白川櫻はやっぱりお兄さんの実の母親だもの。彼女が何をしたとしても、お兄さんには手出しができないわ」

黒川詩織の長い睫毛が軽く震え、目の奥に諦めきれない色が浮かんだ。

森口花は瞳の色を暗くして、淡々と言った。「血のつながりは、この世で最も深い絆だ。誰も本当に断ち切ることはできない。一生引きずることになるんだ」