黒川浩二は黒のオーダーメイドスーツを着こなし、ネクタイはしていないものの、ボタンは一番上まで留められ、禁欲的な雰囲気を漂わせていた。
背筋を伸ばし、坂本加奈の方へ真っ直ぐに歩み寄ると、長い腕で彼女の肩を抱き寄せ、完全に保護者の姿勢で坂本加奈を自分の羽の下に守るように、漆黒の瞳で三橋修二を見つめ、冷たく距離を置いた。
三橋修二は以前、江頭俊樹から墨都のこの男について聞いていた。頑固な性格で、誰とも心を開かず、極めて危険な人物だと。
もし彼が犯罪を犯そうとすれば、警察は頭を悩ませることになるだろう。
「黒川社長、誤解されているようですが、私は単に黒川奥様とお話をしていただけです」結局、決定的な証拠はなく、坂本加奈が事前に知っていたとも、あるいは全ての計画が坂本加奈によるものだとも断言できなかった。