第380章:白髪まで共に

「あら、早く帰ってきてね。外は日差しが強いから、日焼けしないように」上野美里は思いやりを込めて注意した。

坂本加奈は振り返りもせずに外へ走り出した。「わかってるよ」

「この子ったら……」上野美里は笑いながら首を振り、その声には愛情が溢れていた。

坂本加奈は警備室まで小走りで向かい、ドアをノックした。

開けたのは中年の男性で、優しい表情で笑みを浮かべながら「お嬢さん、何かご用でしょうか?」と尋ねた。

坂本加奈は走ってきたため息を切らし、頬を赤らめ、鼻先に小さな汗が浮かんでいた。二度ほど深呼吸をしてから「昨、昨夜、入り口で不審者を見かけたんですが、防犯カメラを確認させていただけませんか?」と言った。

そう言って、自分の部屋番号を告げた。

警備員は彼女を中へ招き入れ、脇の椅子に座らせると、自身はパソコンの前に座って監視カメラの映像を確認し始めた。

すぐに画面に男の凛とした姿が映し出された。車に半分隠れていたものの、横顔からその端正な顔立ちが確認でき、手にはタバコを挟んでいた。

「この人、どこかで見たことがあるような…以前にもこのマンションに来たことがあるんじゃないかな?」

警備員は首をかしげた。

坂本加奈は映像に映る人物が黒川浩二だとすぐに分かった。白い歯で唇を軽く噛みながら「倍速再生で、彼がいつ帰ったか確認していただけませんか!」とお願いした。

「もちろんですよ!」警備員は気さくに応じ、すぐに映像を32倍速に設定した。

すぐに映像から人影が消え、少し巻き戻して停止すると、男が車に乗り込む時刻が朝の5時を示していた。

坂本加奈の長いまつげが軽く震え、心が猫の爪で引っかかれたような、酸っぱくもあり痒くもある感覚に襲われた。

彼は本当に外で一晩中立っていたのだ。

彼はバカなの?

外で一晩中立っていて何になるの?どうして私に会いに来る勇気がなかったの?

考えを巡らせると、もしかしたら彼も怖かったのかもしれない!

私が怒っているのを恐れて、もう二度と相手にしてもらえないのを恐れていたのかもしれない!!

警備員は経験豊富な人生の先輩として、状況を察して「お嬢さん、彼氏さんでしょう?喧嘩したんですね!」

坂本加奈は我に返り、首を振った。「彼は私の彼氏じゃありません」