第383章:私を抱きしめてくれないの

坂本加奈が出発すると春節までに帰ってこられないかもしれないため、大勢の人々が空港まで見送りに来た。

黒川浩二は直接パリまで見送りに行かなかった。一つは坂本加奈が見送りを断ったため、もう一つは処理しなければならない仕事があって離れられなかったためだ。

道中、二人は手を固く握り合い、指を絡ませ、まるで絡み合った古木の根のように、隙間一つない程だった。

空港で、坂本加奈は荷物を預け、搭乗券を受け取り、振り返って見送りの人々の方へ歩いていった。

上野美里と坂本健司は、外国での生活に気をつけること、三食きちんと食べること、寒い時は見た目だけでなく暖かい服装を心がけることなど、繰り返し注意を与えた。

坂本加奈は素直に一つ一つ承諾し、自分の身は自分でしっかり守ると何度も誓った。